前回は賢いおもちゃの買い方について書きました。
今回は賢いおもちゃの与え方です。
いいおもちゃを買っても、与え方を誤るとおもちゃはあまり生かされません。
すぐに子供に飽きられてしまったり、十分に遊ばないまま卒業・・ということがあるかもしれません。
では賢いおもちゃの与え方はどんなものでしょうか?
ほとんどの場合、おもちゃを買ったらそのまま子供に渡し、子供の気の向くままに遊ばせ、おもちゃ箱などに保管し、そのまま・・・という方が多いです。
でもこの与え方だと、子供がおもちゃに飽きるのは比較的早くなってしまいます。
もちろん、質の良く、子供の好みのおもちゃをタイミング良く選んで渡せば長く遊んでくれる可能性は高いです。でも例えそうでなくても、おもちゃの寿命は伸ばせます。
では、どんな与え方のオプションがあるでしょうか。
1.ローテーションをつくる
おもちゃは通常、子供にとって初めて見た時(渡したとき)が感動と驚きと発見のピークです。喜々として飛びついてずっと遊んでいると思います。
ただ、時間が経つにつれ感動が薄れ、ただそこにある「モノ」になってしまいます。それが「飽きる」ということです。
この「飽き」が来るのをなるべく遅らせるには「常にそこにある状態」を回避して、初めて見た時と似た感動を何度も味合わせれば良いのです。
そこで使えるのがローテーション。
自宅のおもちゃを2つまたは3つのグループに分け、1週間ごとに入れ替えます。今週はグループ1のおもちゃ、来週はグループ2のおもちゃ、という感じです。
ローテーションで「おやすみ中」のおもちゃはクローゼットなどに保管しておきます。子供が勝手に取り出せない場所の方がいいと思います。
2つのグループに分けた場合、再度同じおもちゃを見るのは1週間ぶり、3つのグループの場合は2週間ぶりということになります。
しばらく見なかったおもちゃを再び見たとき、また喜んで遊んでくれる可能性が高く、おもちゃに飽きる可能性も低くなります。
ローテーションは1週間ごとという決まりがあるわけではありません。子供の性格や年齢、おもちゃの数などを考慮して決めていただければいいと思います。
また、すべてのおもちゃをローテーションのグループに入れるという決まりもありません。たとえば大きなキッチンセットなど、しまうのが難しいものもあるでしょう。
例えば、うちの娘は現在1歳ですが、小さいものを含めると11種類くらいのおもちゃが出してあり、そのうちローテーションにかけてあるのは6つです。ローテーションに入っていないのは簡易な手作りおもちゃ(たとえば空いたティッシュの箱にガーゼを詰めて引き出し遊びができるもの)や、ただの箱(娘が物を入れたり出したりする遊びに使う用)や、大きいものなどです。今後のおもちゃの増え具合や娘の遊び方を見て、今後も調整していこうと思っています。
2.機会を限る
次に使える手段としてあげておきたいのは、機会を限る方法です。
いつでも常にフリーアクセスのおもちゃは触れている時間が長いのもあり、子供が飽きやすい傾向があります。
もちろん、常に手が届くところに子供の発達に合ったおもちゃがあることは自分から遊び始める機会を作るのにとても大切です。
それとは別に、何か子供にとって難しかったり苦手なことをするときに持てる特別なおもちゃがあると、それをする時に親にとっても成功しやすく、子供にとっても負担が少なくなることがあり、機会が限られているためにおもちゃにも飽きにくくなります。
例えば、うちはまだテープタイプのオムツを使っていておむつ替えのときに寝返ったり暴れたりすることが多くなっていました。そこで、おむつ替えの時だけに使える特別なおもちゃを設定して与えたところ、おむつ替えがびっくりするくらい楽になりました。
あとは、長いお出かけ用専用のおもちゃも作りました。時間がかかりそうな場所へ連れていく時だけ、1時間を過ぎてグズグズしてくる時間あたりで出します。あまり見たことがなく珍しいので、その時は夢中になって遊んでくれ、用事をスムーズに終わらせることができます。
クライエントさんの相談で多いのが、病院や歯医者が苦手なお子さんです。
それらの場合にも、普段は与えない特別なおもちゃを用意しておくと必ずではないですが成功率は上がるように思います。
しばらくするとこれらの特別なおもちゃも飽きてしまうかもしれません。なので、こちらも定期的に入れ替えをすると効果が長くなると思います。
3.おもちゃのランク付けをする
上記の機会を限るのと考え方は似ていますが、おもちゃのランク付けという考え方をご紹介します。
おもちゃは子供にとって、価値が変わっていきます。価値は当然ですが一人一人の子供によっても変わりますし、タイミングと時期により変動します。
モンテッソーリ教育の基本理念の一つに、子供を注意深く観察する、というものがありました。
子供を注意深く観察していると「今日の人気おもちゃ」「今週のマイブーム」「午前中は人気が出たが午後に打ち捨てられたおもちゃ」などなど、その時々の特定のおもちゃの価値を見て取れると思います。
子供の年齢が高くなるとおもちゃの価値の変化は緩やかになりますが、小さいうちはどうしてもクルクル変わるものです。
ランク付けといっても複雑なものではなく、例えばうちではA-Cランクの3種類があります。
Aランク - いつ渡しても喜ぶおもちゃ、あるいは置いておくと高確率で長時間遊んでいるおもちゃ
Bランク - 渡した直後は少し遊ぶがそのうち飽きるおもちゃ、置いておくと時々遊ぶおもちゃ
Cランク - あまり興味がなくなったおもちゃ、置いておいてもほとんど触らないおもちゃ
3種類でなければならないことはないので、もっとシンプルに2ランク制でもいいし、4ランクにしてもいいと思います(あまり多いと分類が大変ですが)。
ランクを付けると言ってもラベルを貼ったりデータ化したり分析したりということではなく(しようと思えばできますが、忙しい日常でそれをするのは中々大変だと思います)、それぞれのおもちゃがどの位置にあるのかをだいたい把握しておくだけです。
で、おもちゃを与える時やローテーションに入れるときはなるべくバランス良く配置するのがいいと思います。
AランクのおもちゃもいつかはBランクになり、そのうちCになるので、Aランクのおもちゃが無くなってきたなー、と思ったらそろそろ新しいおもちゃを買ういい機会かもしれません。
4. その他
これまでいくつかのおもちゃの与え方をみてきました。
これ以外にもおもちゃへの興味を長持ちさせる方法、おもちゃに関していくつか他のヒントを簡単にご紹介します。
一緒に遊ぶ
当たり前に聞こえるかもしれませんが、子供、とくに幼い子はおもちゃの遊び方を知りません。自分で思う遊び方で遊んですぐに放り出す、ということもよくあります。
私の娘も新しいおもちゃは始め触って、ひっくり返して、舐めて、転がして、くらいしかしません。
とくに前回の記事で書いたような自然素材でオープン・エンドのおもちゃは自分から働きかけをしないと何も起こらないので、自分からどうしていいかわからない場合はそこから先に進まなくなってしまいます。
なので、新しいおもちゃは、親が遊び方を実際にやってみせてあげることが大切です。少し慣れてきて飽きかけたおもちゃ(Bランクのおもちゃ)は、親が今までとは違う遊び方を見せてあげるとそれが気に入ってAランクおもちゃに復活することもあります。
一緒に遊んであげること、やり方を見せてあげることはおもちゃの寿命を延ばすだけでなく、子供にとっても発見と共有と楽しさが広がるいい機会です。
「知育おもちゃ」じゃなくていい
おもちゃの売り場やウェブサイト、パッケージを見ていると頻繁に「知育」という単語を目にすると思います。
「知育」とはイギリス人の学者であるハーバード・スペンサーが提唱した「知育・徳育・体育」の基本教育の一つで、知能や才能を伸ばすための教育とされています。
教育法は置いておいて、「知育おもちゃ」というのは基準や査定があるわけではなく、何をもって「知育おもちゃ」というのかは曖昧です。
たとえば、前回紹介した鳥の音楽が鳴ってABCを歌うおもちゃも「知育おもちゃ」と書かれています。
私の印象では「知育」というラベルを貼って売った方がおもちゃが売れやすいので、マーケティング・広告の方法として知育を謳っている場合が多いです。
なので、おもちゃを買う場合は「知育」という表示があってもなくてもいいと思います。逆に、知育と書いてなくても遊び方・使い方によって知育おもちゃになるものはたくさんあります。
知育という広告がしてあると値段が高い場合もあるので、選ぶ際は気を付けてください。
何でもおもちゃになる
これまで「おもちゃ」として売られているものについて書いてきましたが、子供、特に幼い子供にとって「おもちゃ」かそうでないかの線引きはあまりハッキリしていないと思います。
私の娘もそうですが、家の中のもの全部が全部おもちゃみたいなもので、形、材質、硬さ、触り心地、舐め心地などが違うすべての物に関心を持っています。
娘はとくにキッチン用品(お玉、フライ返し、タッパー、ペットボトル、しゃもじ、ボールなど)が好きで、キッチンに立っている時に側に来た際に渡すと喜んでしばらく遊んでいます。
年齢が高いお子さんはおもちゃでないと遊ばないかもしれませんが、子供が小さいうちはおもちゃをたくさん買わなくても、安全な日用品を渡してあげるだけで十分だと思います。
とくにモンテッソーリを取り入れて育てていこうと思っている親御さん(私も含めて)にとっては、実際にその子があとで使うもの(ハンガー、洗濯バサミ、スプーン、お皿)に今から触れて遊んでおくことは自立を助ける第一歩になる気がします。
今回はおもちゃの賢い与え方を見てきました。
参考になりましたら幸いです。